業界・企業に特化し、誰よりもリアルで最新の情報を持つトップヘッドハンター。エージェントファインダーで紹介する各ヘッドハンターは、採用決定率を高めるためにどのような工夫を凝らしているのか。エージェントファインダー代表取締役・粕谷暢司が、特定の業界や企業への高い内定率、リピート率を誇るヘッドハンターにその秘訣を伺いました。
伊藤 鑑さん
エッセンス株式会社 リクルーティング事業部部長 兼 地域共創推進室室長
都内大学を卒業後、人材業界、医療業界での経験を経て2006年に大手人材紹介会社に中途入社。法人企業と求職者双方の支援を経験し管理職として従事。その後、地域活性を目的に地方創生事業立ち上げと統括を経験。2020年より現職。
粕谷:
伊藤さん:
2006年より大手人材紹介会社で、企業担当(リクルーティングアドバイザー)と求職者担当(キャリアアドバイザー)それぞれを経験してきました。2016年からは地方創生事業の立ち上げを通じ、地域の有望企業の発掘を担当。知られざる中小企業の経営幹部人材ニーズなど、地域に携わる面白さに惹かれていきました。エッセンスでも地域にフォーカスした事業をやりたいと考え、2020年9月に入社しました。
現在は、リクルーティング事業部部長と地域共創推進室室長を兼務しています。
リクルーティング事業は、スタートアップ企業の紹介案件が多く、首都圏を拠点とした従業員50~100人規模の企業の求人ニーズを扱っています。業種はさまざまですが、再生可能エネルギーやフードテックなど、まさにこれからの事業拡大が見込まれる領域での案件もお預かりしています。管理部門のマネジメント層以上のポジションで、30~40代、年収600~1200万円前後のレイヤーを担当しています。
地域共創事業では、各都道府県の外郭団体から求人をお預かりし紹介につなげています。お付き合いのある外郭団体は28道府県。産業振興財団様や産業振興公社様などから、毎月150件程度の求人ニーズをいただきます。製造業が6割以上を占め、ものづくりのエンジニアや営業職、管理部門スタッフニーズが多くあります。
中でも私が力を入れて支援しているのは、経営者の右腕となるような幹部ポジション。職種は、管理部門(人事、総務、法務、経理、経営企画、事業企画)系と、営業の幹部クラス(課長クラス以上)で、年収700~800万円の求人が中心です。
40代に入り、社会人も折り返しとなったときに「これまで培った知見を、より必要とされる環境で生かしたい」「次世代のために、より良い社会づくりに貢献したい」と考える方は少なくありません。そうしたマインドを持ち、UIターンで地方で働きたいと思っている方や、「都心部の大企業の中間層にいるよりは、地方の中小企業で経営トップに近いところで腕を振るいたい」と希望される方とお会いするケースが増えています。
例えば、首都圏在住の大手旅行会社の40代半ばの方には、「旅行・宿泊業の知見を生かせる社長の右腕ポジション」で、ある地域の中小企業をご紹介しました。
また、首都圏在住で管理部門全般のご経験がある50代の方は、甲信越地方の会社に総務部門長として入社しています。大手メーカーから学校法人の事務局長として転職し、教育現場改革という大きなミッションを担っている方もいます。皆さん、年収800万円前後でオファーをもらっています。
粕谷:
そもそも「地域で働きたい」と明確な意思を持つ求職者と出会おうと思っても難しいので、現在のお住まいや勤務地域はとくに絞らずに、スカウトでアプローチしています。面談を通して情報交換をしていくと、「環境を変えてでもチャレンジしたい」という熱い想いを語ってくださる方もいらっしゃいます。私としても、覚悟を持っている方をサポートしたいなと思っていますし、地域には、魅力が知られていない優良企業がたくさんあります。これまでの経験・スキルを生かせる環境をできるだけ多く紹介したいと考えています。
前職の人脈もあり、地域の“キーマン”とのつながりが多いんです。キーマンとは、外郭団体に所属している、大手メーカーや銀行の幹部層の方々です。
地域共創事業は、政府が主導する都心から地域への人材流動化の事業の一環なので、エージェントとして事業者登録をしていれば、求人情報自体は毎月入ってきます。その中でも、各エリアの企業情報に精通したキーマンの皆さんから話を聞くと、私が強みとする幹部人材ニーズのある企業はどこかを知ることができます。目利きのある方から情報を教えていただけることが、私の強みの一つかなと思います。
求人情報以外に、私が知り得た情報はすべて、A4用紙3~5枚ほどにまとめてお伝えしています。
社長の会社設立の思い、社内の既存メンバーや幹部層と社長との関係性、過去に社内で起こったトラブル事案など、いい情報もそうではない情報も、入る前に知っていただきたいので共有します。転居を伴うので、家族と離れて暮らす場合はどんな事前準備が必要か、生活環境がどう変わるのかといった情報も細かくお伝えしています。
幹部人材を外部採用で迎えたことがない企業が大半なので、中途採用の一般的な相場観や、求職者がどのような懸念を持つものなのかを丁寧に伝えるようにします。ときに、面接で聞くべき項目や評価の仕方を説明することもありますね。
採用経験が浅いと、「優秀な人材が来てくれれば、すべては解決」と思う経営者もいらっしゃいます。ただ、社内も外部人材登用に不慣れだと、既存メンバーとのハレーションが起こることもあるので、入社前に社内でどんな情報を共有しておくべきか、入社後にはどんなフォローをすべきかなどもお話します。
そうですね。受け入れ側の環境をきちんと整えることが求職者の安心にもつながりますので、両者の橋渡しをするエージェントとしてすべきことだと思っています。
粕谷:
伊藤さん:
多様な視点からの情報を持っているところだと思います。経済団体の方をはじめ、地域で目利き力のあるキーマンの皆さんは、地域の企業とのお付き合いがとても長いんです。前の社長の時代から企業を見ていて、だからこそ知り得る情報を、私に共有してくださる。
そうした幅広い人脈からの客観的な情報を求職者にお伝えできることが、私が提供できる価値の一つだと考えています。
まさに、伊藤さんを介してこそ得られる情報がたくさんあるんですね。
最後に、どんな思いを持った求職者にお会いしたいか、メッセージをいただけますか。
求職者の方とお話していると、「社会のために」「子どもたちのために」という高い視座でキャリアを描いている方が多くて、とてもわくわくするんです。
地域での転職は、生活環境が丸ごと変わるというリスクも一定程度あります。だからこそ、強い思いがある方にしかおすすめできませんが、「可能性を広げたい」「これまでの経験を還元したい」という方には、私がお手伝いできることがあるのではないかと思っています。