業界・企業に特化し、誰よりもリアルで最新の情報を持つトップエージェント。エージェントファインダーで紹介する各転職エージェントは、採用決定率を高めるためにどのような工夫を凝らしているのか。エージェントファインダー代表取締役・粕谷暢司が、特定の業界や企業への高い内定率、リピート率を誇る転職エージェントにその秘訣を伺いました。
グロービス経営大学院修了(MBA)。大学卒業後、日本IBMに入社。エンジニア、プロジェクトマネージャーとして官公庁および金融機関におけるシステム開発に従事。テクニカルセールス部長、事業責任者等も歴任。ベンチャー企業の取締役を経て現職。これまで100名以上の中途採用活動を行ってきた経験を生かし、IT人材がより自分らしく働ける場の提供を目指している。
粕谷:
沼崎さん:
20~30代のころからキャリアについて相談を受けることが多く、40代になったら人材の仕事に挑戦したいと漠然と考えていました。これまで面接担当として100名以上の中途採用にも携わり、企業が求める人材の理解も深かった。また、ビジネススクール(グロービス経営大学院)に通っていたので、社外の人とかかわる機会も多くありました。多くの職種のキャリアサンプルに触れる中で、転職に失敗する人の多さや、優秀なIT人材が過酷な労働環境で働いていることに疑問を抱くように…。この状況を何とかしたいと思っていました。
候補者のキャリアを真剣に考えて支援できる点に共感したからです。
当社に入社する前、あるベンチャー企業でITに特化した人材紹介事業の立ち上げに携わり、経験を積んで独立しようと考えていました。そんなときに知ったのが当社でした。数字目標に追われる転職エージェントが多い中、当社は、候補者本人が考えるキャリア形成にとことん向き合います。自分がやりたいと思っていたスタンスをここなら実現できると考え入社を決めました。
これまで、転職に失敗し、「こんなはずじゃなかった」と後悔している方にたくさん出会ってきたからです。
「管理職にチャレンジしたくてベンチャー企業に行ったけれど業績不振でいられなくなった」「聞いていた仕事内容と違いパフォーマンスを発揮できなかった」など、きちんと情報収集ができていれば避けられたのでは?と思う体験談が多かった。転職エージェントの責任は大きいと感じていました。
転職エージェントが自分のKPIを達成するために候補者の人生を軽んじてはいけません。本人がどんなキャリアを作っていきたいのか、深く聞きながら最適な選択肢を伝えられるエージェントでありたいと思いましたね。
日々あります。周りのエージェントは50代のベテランが多く、採用経験、マネジメント経験あるメンバーばかり。候補者の幸せに本気で向き合い、無理に紹介しようとする人は誰もいません。
社内で仕事をしていると、あと一押しすれば入社が決まりそうなのに「そういう状況でしたら転職するのは辞めた方がいいですよ」と電話しているメンバーがいる。あるいは、自分が紹介していない企業を勧めて「あなたのキャリア形成にとって、そっちの企業の方がいいと思う」などと提案しているメンバーもいる。そんな話が頻繁に耳に入ってくるので、私も常に初心に戻って候補者に向き合うことができます。
粕谷:
楽天様、ADK様、デロイトトーマツコンサルティング様などで年間計20名ほどの入社実績があります。強みは、私自身が企業側で採用面接に長く携わってきたため、企業がどういう人を求めているか理解がはやいところでしょう。
企業様の方から「求人要件や会社の動向について説明したい」とお声がけいただくことが多いんです。その場では、求める人物像をより詳細に理解できるように、ブラインドレジュメ(本人を特定する個人情報を伏せたレジュメ)を共有します。「まさにこういう実績のある方を求めています」「この方は**のスキルが足りないので少し厳しいですね」といった企業様の意見をヒアリングし、候補者とのマッチングを高めています。
また、ITやコンサルティング会社には、マネージャー層に個人的な人脈が多くあるので、直接現場の声をヒアリングして、採用ニーズを具体的にイメージすることもあります。
まずは本人の話をよく聞くことです。これまでの経験のほかに、今後どうなりたいかを中長期的な視点で聞いていきます。「来年こうなりたい」「次の転職先ではこうなりたい」といったすぐ先の話だけではなく、50~60代になったときにどうなっていたいのかが大事です。
例えば、直近で年収を〇〇万円上げたい、という方がいれば、その目標自体は達成できるかもしれません。でも、「将来独立してこうなりたいから、そのための資金が必要」という長期的な目標が見えてくれば、転職先の選び方も変わってきます。「経験を積むために、まずはこの企業で実績を上げて、次のステップでここを目指そう」と提案できるでしょう。
候補者とは、キャリアプランを長い目で一緒に見ていきたいと考えています。
まさにそれを目指しています。
転職理由やこれから実現したいことなど、本人が理解していないことも多くあります。深堀りした結果、「今の会社にもたくさんチャンスがあるのでは」「短期的に嫌になっているだけだから残った方がいいのでは」などと、転職を勧めないケースもたくさんあります。
また、転職のタイミングについても、転職市場とのバランスを見ながら客観的に提案します。以前、20代前半のエンジニアの転職をサポートした際、「在職期間があと1年長ければ転職の選択肢が広がる」「現職でスキルを伸ばしてから転職した方がキャリア形成には絶対に有利」とお伝えし、転職を一時断念していただきました。そしてきっかり1年後に連絡をもらい、大手IT企業に転職しました。
ありがたかったですね。
私はIT業界に約20年在籍し、エンジニアからプロジェクトマネージャー、営業責任者などさまざまなポジションの方を見てきました。だからこそ、今後のキャリアがどう広がっていくか予想ができる。「この年齢でこの仕事を任されているのなら、成長の伸び率がとても高い。あと半年でも現職でスキルを積めば、市場価値はさらに高まる」などと俯瞰して見られるので、目先の転職だけをおすすめすることはありません。
粕谷:
職務経歴書は、人事・採用担当者の目に留まるような書き方を徹底します。
1ポジションに何十、何百もの応募がくると、企業側は一人ひとりの職務経歴書を最初からじっくり読む余裕がありません。さっと目を通し、気になる候補者の分だけ読む。ですから、「目に留まる書類づくり」が大切なんです。
そこでまずは、職務経歴書の要約部分に生かせるスキルや経験を盛り込みます。求人内容に書かれた職務内容や応募資格に合わせる形で、言葉の選び方一つひとつまでこだわります。自分の経歴を時系列でまとめる方がいますが、アピールしたい経験をまず記すこと。書類の冒頭に企業が求める情報が書かれていなければ、最後まで読まれず、伝えたいことが埋もれてしまいます。
実際に、これまで書類選考で10社以上落ちていた契約社員の方が、書類通過率100%となり、正社員として年収1.5倍の転職を決めたケースもありました。
そうですね。
面接対策では、候補者の皆さんに想定質問をお送りし、回答を書き出してもらいます。100回声に出して練習してもらったら、私と模擬面接の練習をします。口に出して練習すると、うまく答えられないところが出てくる。実践的な練習をしておかないと当日答えられずに焦ってしまいます。うまく伝わらないから不合格になるのはもったいないので、アウトプットの練習は大事だと思います。
しますが、決して誇張した情報を伝えることはせず、あくまでも事実を伝えるようにしています。
企業側が採用を迷っている場合、懸念ポイントを補う情報があればいち早く伝えます。あるいは、候補者に対する採用意欲が高い場合に「〇〇さんには、この点を訴求すればアトラクト(動機づけ)につながります」「他2社も並行して受けているので、この部分を具体的にアピールいただくとよいと思います」などアドバイスすることもあります。企業側と候補者側、双方に寄り添いながらサポートしていければ理想ですね。
自分の話をしっかり聞いてくれる転職エージェントかどうか。自分の立場になって情報提供をしてくれる転職エージェントかどうか、をシビアに見てほしいですね。
例えば、職務経歴書を手直しするのは、転職エージェントにとっては大変な作業です。候補者からもらった書類で、入れそうな企業を探す方が効率的でしょう。手直しを一切せずそのまま応募する転職エージェントもいらっしゃると思います。
でも私は、書類の見せ方が悪いだけでキャリアアップのチャンスを失うようなことはしたくない。選考通過率を上げるために、手間暇かけます。そうした細部まで、自分のために動いてくれる人かどうかを、見極めて選んでほしいと思います。