業界・企業に特化し、誰よりもリアルで最新の情報を持つトップヘッドハンター。エージェントファインダーで紹介する各ヘッドハンターは、採用決定率を高めるためにどのような工夫を凝らしているのか。エージェントファインダー代表取締役・粕谷暢司が、特定の業界や企業への高い内定率、リピート率を誇るヘッドハンターにその秘訣を伺いました。
1981年生まれ、茨城大学農学部を卒業。新卒で教育業界を経験した後、2007年から大手人材総合会社マイナビに入社。人材派遣の営業マネージャーを経て、Web・IT・クリエイティブ領域の人材紹介キャリアアドバイザー/マネージメントを担当。2022年にsincereed株式会社に参画。
粕谷:
藤沼さん:
WebデザイナーやUI/UXデザイナー、アートディレクターなどのクリエイティブ職種や、さらにデジタルマーケティングプランナーやPdMなどの紹介も担当しています。30~40代の即戦力層が多いです。
メガベンチャーやSaaS系企業、非IT系のエンタープライズ系事業会社などが中心です。最近は、大手メーカーや大手ディベロッパーなどがDX部門を立ち上げクリエイティブ人材を求める案件が増えています。
数年前には募集もなかったような部門やポジションで、デジタル×クリエイティブ人材の採用ニーズが拡大している傾向にあります。求職者も、自分の強みを事業インパクトにつなげやすいことから志望意欲も高いため、入社に至ったときにWin-Winが大きく、私としてもやりがいがあります。
大学を卒業後、最初に入ったのは塾会社でした。学生時代に家庭教師のアルバイトをしていて、教育業界が自分に向いているかなと思ったからです。予備校部門で教室運営を担当するようになると、17~18歳の子どもたちから「こんな人生を送りたい。どんな大学に進んで何を勉強するといいのか」と相談されることが多くなりました。自分なりに調べてアドバイスするも、私自身が社会のことを何も分かっていないと痛感。キャリアを幅広く知れる人材領域に行こうと転職を決めました。
そして、入社した人材会社で、約15年人材ビジネスに携わってきましたが、その配属の中で、デザイナーやクリエイターなどの専門人材に特化したサービスを担当したことが今につながっています。WebデザイナーやUI/UXデザイナー、ゲームクリエイターの転職サポートを行ったのち、2022年4月に当社に入社しました。
求職者や企業のためにフラットな視点で動ける、両面型の転職エージェントを探していました。当社はインセンティブを高く設定しておらず、求職者に本当におすすめしたい企業だけを提案できます。フィーのために求職者を促すようなサポートはしたくなかったので、その経営スタンスがいいなと思いました。代表の南雲自身にキャリアアドバイザー実績がある点も決め手の一つでした。
粕谷:
クリエイターの方が、どんな判断基準で企業やポジション、業務内容を選ばれているのか、といった傾向を理解している点は大きいかもしれません。
特徴の一つとして、「事業インパクト」と「裁量権の大きさ」を重視するクリエイティブ人材が多いなと感じています。年収の高さや昇給・昇格の可能性といった話より、どれだけ面白いことができるか(社会にインパクトを残せるか)の話を求められることが多いです。その会社が“クリエイティブ×ビジネス”をどれだけ大事に考えているかが、入社の決め手になるケースもあります。
今、DX部門の人材ニーズは急拡大しており、デザイナーやディレクター経験がある方は引く手あまたな状況です。企業からすれば「応募してもらうこと自体が難しい」という売り手市場。その中で、「この企業ではどんな働き方ができるか」というクリエイティブ人材に刺さる魅力を伝えられるので、求職者の皆様から信頼いただけることも増え、企業側からも喜ばれます。
職種名が示す仕事内容の違いも、詳細に理解できています。具体的には、アートディレクター、クリエイティブディレクター、ブランドデザイナー、UIデザイナー、UXデザイナー、インハウスデザイナーなどがありますが、企業によって呼び方や定義が異なるんです。
例えば、ある企業の人事担当者が「UXデザイナーを募集している」とおっしゃられたとします。しかし任されているプロジェクト概要などを詳しく伺っていくと、「その業務範囲であればWebディレクターとしたほうが、一般的な定義とマッチしているのでは」とご提案することもあります。その場合は求職者の方に、「この求人はUXディレクターと書かれていますが、実際はWebディレクターで求められる業務が多いですよ」「ですから、あなたのご経験やスキルを発揮しやすい環境です」などとご説明します。
業務理解が浅いと、職種名のみで判断し、求職者の皆様の選択肢を広める機会を失ってしまいます。
「ポートフォリオの添削」には時間をかけています。
WebデザイナーやUIデザイナーにとって、ポートフォリオの提示は必須です。ポートフォリオというと、作品(納品物)を画像や写真などビジュアルにまとめる方がほとんどなのですが、それはオフライン広告時代の見せ方です。
デジタルプロダクトになると、企業側が見たいのは画面などの完成物ではなく、デザインのプロセス。どんな試行錯誤や工夫を経て、どう使いやすいデザインにしていったのか、ビジュアルではなくテキストでいいので表現することが大切です。
デジタル領域で必要な最低限の情報をご存じない方が多いので、サポートした求職者の8割以上でポートフォリオ添削を行っています。「なぜこの画面を作ろうと思ったのか、どう考えて完成させたのか、あなたが考えた順にポートフォリオに落としていってください」とアドバイスしており、そこは自分の付加価値かなと思っています。
粕谷:
藤沼さん:
一定の経験と実績があるクリエイティブ人材なら、複数社から内定をもらうことができる売り手市場です。
でもだからこそ、何を決め手に選ぶべきか相談役になれると考えています。例えば、40代のUI/UXデザイナーの方は、マーケティング戦略の中でクリエイティブを考える仕事をされてきたため、オファーをもらった内容が多岐にわたりました。具体的には、大手メーカーのDX戦略部のアートディレクター、大手アパレル会社のグローバルマーケティング統括業務、ミドルベンチャーでのCMO、スタートアップでのCDOなど、どこが最適なのかご本人も判断できずにいました。
クリエイティブ人材に求められる役割がますます広がっていることから、「自分は何ができるのか」「何をしたいのか」を整理することが重要です。そんなときこそ、この領域に詳しく、第三者視点で意見してくれるヘッドハンターは、心強い存在になれるのではないかと思うんです。
私がサポートするクリエイティブ人材には、PdMやデジタルマーケター、コンテンツディレクター、Web編集者なども含まれます。クリエイティブ人材の方々の新しい発想・アイディアが、日本をよりよくしていけるチカラだと本気で思っております。