転職活動の質を決める要素の一つに、「伴走してくれるエージェントの質」があります。しかし、多くの人にとって、転職活動は一生に数回しか行わないもの。どうすれば自分の状況に最適なエージェントに出会えるのか、手探りのまま活動を始める方も少なくありません。いいエージェント選びのポイントとは何か。転職コンサルタントの黒田真行さんに聞きました。
1965年生まれ。1989年、関西大学法学部卒業後、株式会社リクルートに入社。
B-ing、とらばーゆ、フロム・エーの関西版編集長などを経て、2006年から8年間、転職サイト、リクナビNEXTの編集長を務める。
1万2000人を超える転職者・経営者・人事責任者への取材経験から、転職活動の具体的ノウハウや心理的支援、日本の中途採用市場、マッチングの構造に精通する。
2014年9月、中途採用市場の積年の課題であった「ミドル世代の適正なマッチング」を目指し、ルーセントドアーズ株式会社を設立、代表取締役に就任。
35 歳以上に特化した転職支援サービス「Career Release 40」(キャリアリリース40)を運営している。著書に、『転職に向いている人 転職してはいけない人』(日本経済新聞出版社)『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
転職者の行動に関する調査(ルーセントドアーズ株式会社調べ:2018年)では、転職活動をスタートしてから入社するまで、平均で約90日間(3カ月間)かかるといわれています。情報収集には転職サイトを3つ、エージェントを3社利用し、合計27社に応募するのが平均値であり、そのうち7社に書類通過し、一次面接通過が3社、1.5社に内定して入社を決めています。
現職で仕事をしながら転職活動をする場合、仕事を終えたあとや就業前の朝や夜に時間をさくのが現実的なところ。90日間のうち応募前の準備段階に45日かけたとすると、1日最大4時間×45日=180時間が、仕事、職場選びにかけられる時間です。限られた時間の中で、自分に合った27社に絞るためには、いい転職サイトやいいエージェントに出会うことがとても重要になります。
自分が就きたい仕事が明確にあり、自分で選べる方にとって、転職サイトは広く情報をサーチできる有効なツールです。ただ、初めて転職する方や、転職自体すべきか悩んでいる方、自分の市場価値を探りながら選択肢を広く見ていきたい方などは、できるだけ多くの生の情報に触れることをおすすめします。
転職活動を始めるにあたり、まず進めたいのは、自分の経験やスキルが市場の中でどれくらいニーズがあるのか、相対的な価値を知ること。情報の網羅性が高いindeedはぜひ活用したいツールの一つです。加えて、転職市場動向や企業の求める要素に精通したエージェントは、個別具体的なアドバイスをもらえる点で、いいパートナーになることでしょう。
では、転職活動の質や、活動後の納得度を高めてくれるエージェント選びのために、どんな点を見るべきなのか。
ポイントは、「相談の質の高さ」×「そのエージェントが保有する求人数の品揃え」です。
大手のエージェントであればあるほど、保有する求人数は多くなります。自分の市場価値を探りたい、幅広い選択肢を見たいという方には適しているといえるでしょう。ただ、業界や志望企業が明確な場合は、その業界に強いブティック型のエージェントもまた、自分が求める情報を集中的に得るには有効です。
エージェントにもさまざまなタイプがあり、採用決定に向けて強めに背中を押すタイプのもいれば、「転職しない」という選択肢を含めて中長期的な視点でアドバイスをするエージェントもあります。
現職に就いていない方や、退職時期が決まり転職先の決定が差し迫っている方は、採用決定をスピーディに進める前者のタイプが合っているでしょう。一方、そもそも転職すべきか否かから悩んでいる方は、長期的なキャリアを考えながらフラットに相談できるタイプが合っているかもしれません。
また、エージェントによっては、志望する業界、企業において、現在のスキルや経験をどう伸ばせば合格しやすいかを提案したり、アドバイスしたりすることもあります。ご自身の転職意向度や、転職時期、志望業界や企業がどれくらい絞り込まれているかに応じて、自分に合ったエージェントを選んでいってほしいと思います。