転職情報誌から転職サイト、SNSを活用したダイレクト・リクルーティングへ、転職手段は2000年代に入りドラスティックな変化を辿ってきました。現在、転職する方法にはどんなものがあるのか。転職を取り巻く環境の過去、現在、未来について、転職コンサルタントの黒田真行さんに聞きました。
1965年生まれ。1989年、関西大学法学部卒業後、株式会社リクルートに入社。
B-ing、とらばーゆ、フロム・エーの関西版編集長などを経て、2006年から8年間、転職サイト、リクナビNEXTの編集長を務める。
1万2000人を超える転職者・経営者・人事責任者への取材経験から、転職活動の具体的ノウハウや心理的支援、日本の中途採用市場、マッチングの構造に精通する。
2014年9月、中途採用市場の積年の課題であった「ミドル世代の適正なマッチング」を目指し、ルーセントドアーズ株式会社を設立、代表取締役に就任。
35 歳以上に特化した転職支援サービス「Career Release 40」(キャリアリリース40)を運営している。著書に、『転職に向いている人 転職してはいけない人』(日本経済新聞出版社)『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
現在、年間の転職者数は250万~300万人と緩やかに増加傾向にあります(内閣府発行「日本経済2017-2018」より)。転職手段は、エージェント(人材紹介会社)、転職サイト、リファラル(縁故)、ハローワーク、企業ホームページ(直接応募)の主に5つ。エージェントや転職サイトをはじめとした有料サービスが占める割合は全体の4分の1ほどで、ハローワークや縁故採用が大半となっています。
人を介して就職先を紹介するエージェントのビジネスモデルは、戦前から変わらずにありますが、転職サイトのあり方は時代とともに変化してきました。大きく分けて、紙媒体、インターネット、SNS活用という変遷を辿っています。
“公募”という概念が生まれたのは明治時代。それまでは縁故採用がすべてでしたが、明治5(1872)年に、初めて新聞に採用広告が掲載されました(職種は「乳母」でした)。
戦後になると失業率問題が深刻化し、公共の職業安定所(ハローワーク)が誕生。1960年のリクルート創業により、新聞広告を集めた「就職情報誌」が生まれ、現在の転職サイトのベースとなるビジネスモデルが誕生しました。
転職手段が大きく変化したのは、1995年のインターネットの登場です。ただ、当初は紙に載っていた情報をインターネットで手に入れられるようになったというだけ。インターネットによる一番大きなイノベーションは、個人のレジュメ情報をプール(データベース化)することで個人が特定でき、そこにラブレターを送るという「スカウト」の概念が登場したことです。企業が個人に直接アプローチすることが可能になり、これがダイレクト・リクルーティングの誕生につながります。
2000年代になると、転職口コミサイトが登場し「企業から求職者へ」という一方的なコミュニケーションスタイルが崩れることになります。企業内部の人、あるいは転職経験者が、企業のリアルな情報を口コミで発信することで、個人がより情報を双方向から得られるようになったのです。
2010年以降は、SNSが新たな転職手段の一つになりました。ビジネスSNSを代表するLinkdInが日本に上陸し、SNSを使った企業PRサービスWantedly(ウォンテッドリー株式会社)が設立されました。Wantedlyは、求人広告では記載必須とされていた「給料」「福利厚生」などの労働条件を記載せず、企業ビジョンやカルチャーでアプローチするという新たな手法が注目されています。
インターネット上に膨大に広がる求人情報を、個人のニーズに合った形で網羅して示してくれる手段が、求人情報専門の検索エンジンIndeedです。2009年に日本での運営を開始し、12年にはリクルートの完全子会社となっています。Indeedは、情報の取捨選択が難しくなる中で生まれた、転職者の羅針盤のような存在だといえるでしょう。
こうして見ていくと、「企業から個人へ」と発信されてきた情報は、企業と個人が1対1でつながることでよりリアルに双方向になってきたことがわかります。転職手段の選択肢が広がる中、信頼できる情報をいかに選んでいくか。個人の動き方が転職活動の質に大きく影響してくるでしょう。リアルな情報収集手段のメインストリームにあるエージェントの活用は、情報のあふれる今だからこそ、活用の意義がより高まっているのではないかと思います。
このエージェントファインダーは、自分の希望や志向に合わせてエージェントを探し、接点を持つことができる点で、非常に有益なサービスでしょう。これまでのエージェント選びは、会ってみないと担当者の実績や経験、自分とのマッチングが分からず、行き当たりばったり感が否めませんでした。あらかじめエージェントに関する情報を比較検討した上で、自分に合った担当者に出会えれば、より安心して転職に挑戦できるようになるでしょう。