業界・企業に特化し、誰よりもリアルで最新の情報を持つトップエージェント。エージェントファインダーで紹介する各転職エージェントは、採用決定率を高めるためにどのような工夫を凝らしているのか。エージェントファインダー代表取締役・粕谷暢司が、特定の業界や企業への高い内定率、リピート率を誇る転職エージェントにその秘訣を伺いました。
1977年、京都府京都市生まれ。京都大学を卒業後、株式会社リクルートエイブリック(現リクルートキャリア)に入社。人材紹介のリクルーティングアドバイザー(企業担当営業)としてキャリア採用支援に携わる。2007年、当時最年少で累計売上10億円を達成。2012年、現役社員で唯一となる累計売上15億円を達成し、全社表彰を受ける。2013年、株式会社コンプリート設立。代表取締役就任。
粕谷:
松尾さん:
2013年に転職エージェントとして独立するにあたり、どの業界に特化していこうかと考えました。前職では大手製造業や金融業界も担当しており知見はありましたが、人と企業のマッチングにもっとも情熱をもって取り組めると思ったのが人材紹介領域でした。
そもそも私自身が前職に入ったのは、「より多くの人がゴキゲンに働ける世の中になってほしい」という理由からでした。大学時代に留年したため友人たちが先に社会人になっていったのですが、みんな働き始めた途端に、暗い表情になり愚痴が増えていくことにショックを受けたのです。一人ひとりがもっとイキイキと働ける社会にするために、個人と企業のWin-Winを実現できるのが人材紹介業だと思いました。
粕谷:
私は、候補者の背中をぐいぐい押すことはなく、「早く受けましょう」「たくさん応募しましょう」などと勧めることもありません。
面談でお会いした段階では、転職ありき、求人紹介ありきだとは思っていません。私に会ったということは、仕事やキャリアに対して何かしらのもやもやした気持ちを抱えているということ。それが解消されたり、気持ちが軽くなったりすることをゴールにしています。
伺った内容によっては転職をお勧めしないこともありますし、今の会社でこんな仕事や経験を積んでから動いた方がいい、といったアドバイスもします。「今日話した内容を、そのまま上司に相談してみては?」とお伝えすることもあります。
その場合は、年齢や希望業界、職種の観点から一緒に作戦を立てていきます。20代でしたら「いったん業界を近づけて、こんな企業で経験を積んでから、次のステップで希望を叶えましょう」といったように。
私は人材紹介会社専門のエージェントで対象が限られているので、ほかの業界に転職をお勧めする際はその領域に強いエージェントを紹介することもあります。
業界経験者の方には、次はどんな領域でやりたいのか、どんなポジションに就きたいのか、具体的な希望条件を聞いていきます。
また、カルチャー面などアナログな情報提供は手厚くするよう心がけています。人材紹介会社には、各社が大切にしている価値観があり、仕事の進め方、お客様(求人企業や求職者)とのコミュニケーションの仕方も異なります。個人と会社の価値観が合っていないと入社後にうまくいかず、結局は早期離職につながってしまいます。
そこで、どんな社長がどんな想いで立ち上げた会社なのか、現在はどんな状況で、どんな未来を目指しているのかを丁寧にお話しするようにしています。また、報酬体系には会社のポリシーが反映されていることも多いので、その内容から事業や従業員に対する考え方も伝えています。
マッチングを考え抜いた上でご紹介していることが奏功しているのか、これまで紹介した方で早期離職となったケースは1件もありません。
会社のいい面も悪い面も、それぞれの主観が入りますので、できるだけバランスよく情報を集めた上で、候補者の方には客観的にお伝えしています。
これまで紹介してきた企業情報、面接での質問内容、候補者へのフィードバック内容はすべてドキュメント化しており、各社膨大な量になっています。それらをもとに、「過去の面接ではこんなことを聞かれました」「こんな理由で受かっている人、落ちている人が多いですよ」というのをお伝えします。
模擬面接は、私自身ロープレが好きじゃなかったこともあり、あまりやらないですね。
大きな強みはやはり、人材紹介会社専門として業界情報を豊富に持っているところですね。各社の仕事の進め方、任される業務範囲がどう分業化されているかまで詳細にお伝えすることができ、候補者の方が重視しているポイントを厚くお話しできます。
また、候補者が仕事に向いてそうか、向いてなさそうか、自分なりに見えることもあります。本人のいい気づきになるのであればフィードバックし、私を通して転職活動をすることがなかったとしても、「相談してよかった」「いい面談時間だった」と思ってもらえたらいいなと思います。
大手人材紹介会社は、幅広い情報を持っているので、今の市場にはどんな求人があるのかを知りに行くにはいいでしょう。一方、志望業界を絞っている方で、深いアドバイスを求めるフェーズでは、業界に特化した転職エージェントがいいと思います。
誰から受けるかで採用決定率が変わることは、現実としてあります。企業情報をたくさん持っていたり、企業とパイプを持っていたりするエージェントを見極めてもいいのでは。好き嫌いや相性も重要なので、「この人となら一緒に相談しながら動いていける」と思える人に出会えるよう、比較検討しながら決めていってほしいですね。