業界・企業に特化し、誰よりもリアルで最新の情報を持つトップヘッドハンター。エージェントファインダーで紹介する各ヘッドハンターは、採用決定率を高めるためにどのような工夫を凝らしているのか。エージェントファインダー代表取締役・粕谷暢司が、特定の業界や企業への高い内定率、リピート率を誇るヘッドハンターにその秘訣を伺いました。
安藤 永登さん
sincereed株式会社
エージェント
2019年に立命館大学を卒業後、豊田通商グループの機械専門商社に入社し、国内外向けの設備工事営業に3年間従事。その後、リクルートグループ(当時)のRGFに入社し、製造業領域(電気・エレクトロニクス関連)の両面型人材紹介に約3年間携わる。20代から60代まで幅広い年齢層の技術者・エンジニアの転職支援を経験し、製造業の技術的知見を深める。キャリアコンサルタント資格を保有。2025年にsincereed株式会社へ参画し、現在はコンサルティング業界向けの人材紹介を中心に、製造業で培った専門知識を活かしたマッチングを強みとする。
粕谷:
安藤さん:
新卒で機械専門商社に入社し、3年間、国内外向けの設備工事営業をしていました。有形商材の営業をする中で、次は無形商材の営業にチャレンジして、より介在価値を発揮したいと思ったことが人材業界を目指したきっかけです。お客様や社内の方々とのコミュニケーションを通じて「人」という領域にフォーカスしたくなったことや、周りに、ハードに働きすぎて心身の不調を抱える友人がいたこともあり、そんな人たちを転職支援という形で支えられたらいいなと思ったんです。
そこで、仕事と両立させながらキャリアコンサルタントの資格を取得したのち、RGF Professional Recruitment Japanに転職。RGFでは約3年間、製造業領域、主に電気・エレクトロニクス関連企業への両面型の支援を手掛け、20代から60代まで幅広い年齢層の技術者やエンジニアの転職をサポートしてきました。
大きく2つあります。1つ目は、当社が製造業領域をまさに立ち上げるフェーズにあり、RGFで培ってきた製造業の知見をそのまま活かせると感じたこと。2つ目は、会社としての展望です。sincereedは、専門性を持ったコンサルタントが集まるブティック型エージェントでありながら、大手エージェントのようにデジタルを活用した効率的なマッチングを両立させようとしています。どちらの良さも強みも伸ばしていこうという当社の理念に共感したことが、入社の決め手になりました。
コンサルティング業界向けの支援に注力しています。紹介実績のあるファームとしては、ベイカレント・コンサルティング様、アクセンチュア様、EY様、そのほか新興ファームなどがあります。
コンサル業界の企業様からは、プロジェクトに必要な人材のスペックがキーワードベースで届くことが多くあります。ただ、「半導体」「プロセス開発」といったキーワードひとつとっても、前工程なのか後工程なのか、どの領域のニーズなのかで求める人材像はまったく異なります。製造業領域を支援してきた経験があるからこそ、企業様とキーワードの中身まで踏み込んだすり合わせができ、技術の深さや仕事内容を正確に見極められることが、私の強みだと考えています。
求職者の年齢層は20代から50代まで幅広く、事業会社からコンサルファームへのチャレンジ、コンサルファーム間の転職のいずれもご支援しています。とくに、営業職や製造業バックグラウンドの方のコンサル転職には、これまでの経験からも深い業務理解を持ってサポートできます。
さまざまなケースがありますが、1つは、ATカーニーからアクセンチュアへのコンサル間転職の事例です。求職者は28歳の方で、事業会社のソニーを経てATカーニーに在籍されていました。「手触り感のある仕事がしたい」という志向が強く、当初は事業会社への回帰を希望されていたんです。
なぜアクセンチュアに決められたかというと、私がアクセンチュアのマネージングディレクター(MD)と直接お打ち合わせをする機会があり、プロジェクトへの携わり方について詳しく伺えたことが大きかったと思っています。MDご本人から、クライアント企業とパートナーのような関係で進められることや、事業会社に近い手触り感を持ってコンサルワークができることを、実際のプロジェクト事例を交えながら聞くことができました。
ワークライフバランスの実態や、今後の会社としての展望、AIとの関わり方などリアルの情報を多角的にお伝えしたことで、「そんな働き方ができるなら自分の志向と合う」と納得感を持って、入社を決めていただけました。年収は850万円から1,050万円へ約200万円アップ。残業時間も月160時間相当から月20~30時間程度に大きく改善し、収入とワークライフバランスの両方を実現した事例です。
そうですね。MDの方は部門を統括されている立場なので、今後の組織の未来像や、そのMDご自身の人柄、チームの雰囲気まで伝えることができます。求人票やホームページからは見えない情報を提供できたことが、大きな価値だったと思います。
2つ目は、52歳の方を三菱重工からベイカレント・コンサルティングにご支援した事例です。生産管理・SCM領域で長年経験を積まれてきた方で、コンサルファームも視野に入れつつも、事業会社への志向が強い方でした。
一般的に、コンサルファームへの事業会社からの転職は40代後半が限界とされています。ただ、ベイカレント・コンサルティングにはエキスパートとしての採用枠があり、50代前半の方も活躍されています。この情報を丁寧にお伝えし、キャリアの成熟期にある方だからこそ「これまで培った知見をどう還元していきたいか」という未来軸のヒアリングを重ねました。年収は1,400万円から1,500万円に上がり、ご本人にとっても、この年齢での新たなキャリア選択が実現したことに大きな手応えを感じていただけました。
コンサルファーム以外に事業会社への転職支援も行っており、アパレルの販売職の方をファーストリテイリングの法人営業ポジションにご紹介した事例があります。
この方は以前、同じファーストリテイリングの企画職で応募したことがあったのですが、見送りとなっていました。ところが私が企業の担当者と日頃から密にやり取りをしていたところ、セールスポジションのニーズが出てきそうだという情報をいただけて…。すぐにその方に優先的にお声掛けし、面接対策も重ねた結果、内定・入社につなげることができました。学生時代からファーストリテイリングに憧れを持っていた方だったので、その夢の実現をお手伝いできたことがとてもうれしかったですね。
もう1つ、日立製作所にご入社いただいた事例もあります。この方は、以前に別のエージェント経由で同じポジションに応募した際、見送りになっていたんです。もしかしたら、学歴や社格といったスペック面で、エージェント側がスクリーニングの段階で落としていたのではないか…とも思っています。しかし実際にお会いして仕事の中身を深くヒアリングすると、スキルも人柄も社風にすごくマッチしている方でした。推薦状を作成してご紹介したところ、書類選考を通過し、最終的にご入社が決まりました。
職務経歴書を見ればハード面のマッチングは誰にでもできると思っています。私が大事にしているのはソフト面のマッチングです。その方の性格、今後のキャリアビジョン、仕事のやりがいや強みをどう捉えているか。こうした部分を深掘りし、求人票には載っていない情報と掛け合わせてマッチングしていきます。
面談ではキャリアのスタート地点から現在、そして5年後・10年後の未来まで、過去から未来にかけてどういった気持ちでキャリアを選択してきたのかをヒアリングしています。
求職者の理解と同様に、企業側の理解も深めなければ自信を持って紹介することはできません。そこで企業説明会や部門責任者との打ち合わせには積極的に参加し、社風、働きやすさ、登壇者の表情や雰囲気まで自分の目で確認するようにしています。
書類選考の通過時や一次面接の通過時には、必ず企業様に「なぜこの方を通過としたのか」を確認するようにしています。想定される質問、面接官のアサイン、面接で重視されるポイントなど、最新の一次情報をまず取りに行きます。社内にデータが蓄積されていたとしても、面接官が入れ替わっていたり、ポジションの要件が変わっていたりすることがありますので、常に最新情報を優先しています。
その上で、当社に蓄積されている過去の選考データ――通過理由、見送り理由、質問傾向など――をもとに、そのポジションの傾向を踏まえた面接対策を、求職者一人ひとりに合わせてカスタマイズして行っています。
条件交渉も行います。内定が出る前の段階から、求職者の方に「年収がいくら以上なら志望度が高まりますか」「即決できるラインはどのあたりですか」といった温度感を確認し、条件面を理由にブレが生じないよう事前に固めていきます。
前職で製造業の技術者を支援していたときを含め、市場に希少な人材を紹介するケースも多くあります。その際は、「こんな経験値を持った方はほとんどいません。この年収で採用できることは、御社の事業拡大に対して十分に見合う投資です」といった形で、企業の将来的な事業成長まで踏み込み、その方の市場価値を根拠に交渉することもあります。
転職市場が活発な時代ではありますが、必ずしも「今すぐ転職したい」という気持ちでなくてもいいと思っています。キャリアの棚卸しをしたい、気持ちを整理したい、自分の市場価値を知りたい、そうした段階でもぜひご相談いただけるとうれしいです。
面談の場で現職に留まるという結論になることももちろんあります。その場合でも、6か月後、1年後に改めて状況を確認させていただく機会を設けるようにしています。第三者であるからこそお伝えできる視点がありますし、一度ご縁をいただいた方とは長期的なお付き合いを大切にしています。キャリアの大切な選択に、ぜひ伴走させてください。