業界・企業に特化し、誰よりもリアルで最新の情報を持つトップヘッドハンター。エージェントファインダーで紹介する各ヘッドハンターは、採用決定率を高めるためにどのような工夫を凝らしているのか。エージェントファインダー代表取締役・粕谷暢司が、特定の業界や企業への高い内定率、リピート率を誇るヘッドハンターにその秘訣を伺いました。
本城 直季さん
株式会社CoWrite
代表取締役社長
明治大学経営学部卒業後、NECグループでデジタル広告配信プラットフォームの開発業務に従事した後、株式会社プライムクロス(野村不動産グループ)で不動産・住宅業界向けの広告事業に関西支店長・新規事業担当として従事。CXデザイン会社の株式会社ボーダー・アンド・ポーター、デジタル広告代理店のハマナス株式会社を創業し代表取締役に就任。2社ともにバイアウトを経て、2021年2月に株式会社CoWriteを創業。
粕谷:
本城さん:
2007年の大学卒業後、インターネット広告の商品企画、営業企画、新規事業責任者や広告制作のディレクションなど、約9年間で、広告に関する一連の業務領域を経験。その後、自分で溜めたお金で事業をやりたいと思うようになり独立を決め、2社の起業と事業売却を経験しました。一つは、EC通販に限定した広告代理店、もう一つは不動産住宅業界に特化した広告代理店の会社でした。CoWriteは私にとって3社目の起業となります。
人材紹介領域に興味をもったのは、広告代理業においても、専門的なスキルを持った人材をクライアント企業に送り出し、そこで業務を担うケースが多くあったからです。2社目で不動産住宅領域に特化していたこともあり、CoWriteは、建築・土木・不動産の3業界に特化して人材紹介を担っています。
不動産業界と一言でいっても、その中には非常に多くの職種があります。土地の買い付けから、商品企画といった開発担当者から、より金融的な観点が必要とされるアセットマネージャー、ファンドマネージャーもありますし、不動産管理業もあります。
また、建築・土木業界は人材不足が顕著な業界でもあります。今後AIがどれだけ進化しても施工管理業といった、資格を生かして現場仕事に従事できる人材は絶対にAIに取って代わられることはありません。そうした現場職の人材創出という観点でも、紹介に力を入れています。
建築・土木業界では、例えばパナソニック建設エンジニアリングさんなどをはじめとしたサブコンです。パナソニック商材を使った建築の施工管理職や、空調や照明などの電気施工管理職への紹介実績がいくつかあります。
不動産・住宅業界では、大手ハウスメーカーの注文住宅営業や土地活用の施工管理、大手不動産企業における、開発やアセットマネジメントの紹介もさせていただいております。
おっしゃる通り、これまでの職務経験やスキルを活かして、役職を上げたい方や年収アップを望んで相談に来られる方が多いです。また、これからのキャリアを考えて、既存の専門領域と、ほかの領域を掛け合わせてチャレンジしたいという方もいらっしゃいます。
実際に転職サポートした方に、不動産業界で用地仕入をメインにキャリアを築いてこられた方がいらっしゃいました。でも、そのスキルだけでは、40代、50代になるとどうしても市場価値が下がっていってしまうんです。そこで、不動産開発職に異動できる可能性のある企業を紹介することで、開発領域までスキルの幅を広げていけるようにと提案したこともあります。本人の志向性と、中長期的に市場価値をどう上げていくべきか、という観点でご紹介するケースが多いですね。
市場に対するマーケット理解と、業界の知見、そして経営的な視点を持っていることが大きな強みだと考えています。
私自身が、当社含め3社で経営を経験してきたこともあり、組織フェーズに応じて、“今この会社に必要な人材は誰か”を具体的に想定することができます。紹介する企業について候補者と話すときは、「この会社は、現在従業員〇人から〇人への拡大フェーズなので、こういうスキルを持った人材が必要とされている」「ここに転職するのなら、〇年後までに△△のスキルや経験を持っておかないと厳しい。入社後も、そこまで見据えて努力を続けられるか」といった話までしながら、ご本人が望むキャリアを一緒に考えていきます。
そうです。また、企業のいいところも悪いところも正直に、具体的に伝えます。決して、いいことばかり言って選択を促すことはしません。
また、紹介する企業の経営者がどんな人物かは重要な観点です。従業員の離職率なども見ながら、この企業に人を紹介して、ご本人のキャリアを含む人生がより良くなるかどうか。そこに疑問を感じる企業に、紹介することはありません。
取締役や経営層から直接、役員クラスの求人をもらうこともあり、非公開求人を多く持っています。そうした経営者ネットワークは、これまで起業して作ってきたつながりや取引先との関係もありますし、SNSでのつながり、経営者が集まる県人会といった対面のコミュニティなど多岐にわたっています。
一般的な書類添削や面接対策もしていますが、「こういうことを聞かれたら、こう答えましょう」といった、一問一答の準備はしません。大事にしているのは、応募する企業がどんな事業目的を持っているのかをご本人にしっかり考えてもらうこと。例えば大手ディベロッパーが不動産開発職を募集していたら、「この開発職に必要なスキルは何か」を、企業文化や、今後の事業展開、中期経営計画などと照らし合わせながら考えてきてもらいます。採用側の目線を理解できるようになれば、どんな強みや魅力を伝えるべきかが整理されていきます。私と会話を重ねながら、「こういう人物像でなければ、採用する意味はないですよね」などと、企業理解を一緒に深めていくんです。
大手ハウスメーカーの土地活用分野でナンバー3として活躍されていた方が、ある土地活用会社の支社長という役職で転職したことがありました。
役職も年収も下げての転職だったので、イレギュラーなケースではありますが、成長スピードの早さやこれから組織を作っていくというフェーズに魅力を感じていただき、ご本人は非常に満足していました。
その決断に至るまで、面談は20回以上重ねました。私は役員から求人を預かっており、「この候補者が入社することで、会社は成長していくはずだ」という確信がありました。新しくチャレンジしたいという本人の意向も強く、本人にとっても企業にとってもいい出会いになったと思っています。
候補者は、私たち人材紹介業にとってお客様でありますが、私は、入社した企業の事業成長を一緒に作っていくための“パートナー”であると思っています。その企業にとってなぜあなたが必要かという議論を重ねながら、一緒にこれからのキャリアを考えていきましょう。